- 人材派遣の基本
雇用形態とは?種類別の特徴や変更時の注意点・手続き例を解説
企業にとって、人材は重要な経営資源の一つであり、その活用方法は経営戦略の根幹をなします。そして、事業の特性や必要とする人材のタイプに合わせて、さまざまな雇用形態を使い分けることも戦略の一環です。
とはいえ、不適切な雇用形態の運用は、労務管理上の問題やコンプライアンス上のリスクにつながる可能性があります。
人材確保や組織運営の効率化につなげるためには、雇用形態ごとの特徴やメリット・デメリットを十分に理解し、適切に選択することが重要です。
本記事では、正社員、契約社員、パート・アルバイト、派遣社員、業務委託について、雇用形態の特徴や選び方、雇用形態を変更する際の注意点について解説します。
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雇用形態とは
雇用形態とは、企業と労働者の間で結ばれる雇用契約の種類のことです。雇用形態によって、労働条件や雇用期間、社会保険の適用などに違いがあります。
近年では、働き方改革の推進により、雇用形態も多様になりました。正社員という従来の雇用形態だけでなく、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなど、さまざまな選択肢が存在しています。
企業にとっては、自社のビジネスモデルや業務内容、求める人材像に合った雇用形態の選択が、人材確保と組織運営の面で重要になるでしょう。
雇用形態の区分
雇用形態は「正規雇用、非正規雇用」「直接雇用、間接雇用」で区分されます。
大まかな人材活用の方針を立てるのに役立てられるよう、区分を把握しておきましょう。
正規雇用、非正規雇用
雇用形態は、雇用期間の定めの有無という観点では「正規雇用」「非正規雇用」で区分されます。
正規雇用 | 非正規雇用 |
---|---|
雇用期間の定めがない | 雇用期間に定めがある |
正規雇用には正社員が該当し、原則それ以外は非正規雇用になります。正社員の雇用が難しい場合には、非正規雇用のいずれかの形態で雇用するといった判断ができます。
直接雇用、間接雇用
就業先の企業に雇用されているかという観点では、雇用形態は「直接雇用」「間接雇用」で区分されます。
直接雇用 | 間接雇用 |
---|---|
企業と労働者が直接、雇用契約を結ぶ | 企業と労働者の間に第三者が介在する |
間接雇用の代表例は、人材派遣です。この場合、派遣社員は派遣会社と雇用契約を結んでいます。
派遣会社と派遣先企業は労働者派遣契約を結び、必要な人材を派遣会社が選び、派遣先企業へ派遣します。
派遣社員に対する給与の支払いや社会保険の適用などは、雇用主である派遣会社が行うため、給与や保険料の計算などに手が回らない状況であれば、間接雇用を活用するといった判断もできるでしょう。
雇用形態の種類(区分)
一般的に企業で多く採用されているのは、以下4種類です。
- 正社員
- 契約・嘱託社員
- パート・アルバイト
- 派遣社員
唯一、正規雇用なのは、正社員です。契約・嘱託社員やパート・アルバイトは、直接雇用であっても非正規雇用になり、就業期間に制限があります。
また、直接雇用は正社員、契約・嘱託社員、パート・アルバイトであり、間接雇用は派遣社員です。
派遣社員の雇用主は派遣会社になるため、派遣先企業は、契約に定められた内容の業務以外は指揮命令できません。
正社員の特徴
正社員は、法律上で定義されている言葉ではありませんが、一般的には以下に当てはまる場合が該当します。
- 雇用期間の定めがない
- 所定労働時間がフルタイムである
- 直接雇用である
正社員は、企業との雇用契約において、長期的かつ安定的な雇用が保証されています。そのため多くの場合、正社員は企業の中核を担う存在として扱われるでしょう。
なお、近年では、正規雇用と非正規雇用の働き方の二極化を緩和すべく、正社員の働き方も多様化しています。厚生労働省では、これを「多様な正社員」と呼称しており、具体例として以下を挙げています。
【多様な正社員の例】
- 全国転勤のない営業職
- 限定された店舗で働く販売スタッフ
- ディーラーなど、特定の職務のスペシャリスト
- 短時間勤務(1日6時間程度)の事務職
引用:厚生労働省「勤務地などを限定した「多様な正社員」の円滑な導入・運用に向けて」
従来、正社員の働き方は画一的で、希望の働き方ができず非正規雇用に流れてしまうケースもありました。しかし、通常の正社員とは別に「多様な正社員」を導入することで、幅広いニーズをもつ優秀な人材を確保できるようになります。
メリット
正社員という雇用形態には、以下のメリットがあります。
- 優秀な人材が集まりやすくなる
- 長期的な人材育成により、従業員のスキル向上や定着率アップにつながる
- 中核業務を担う人材を安定的に確保でき、事業の継続性や安定性に寄与する
多くの労働者にとって、安定した雇用は長く働くうえで重要な条件です。正社員を希望する労働者は多く、募集により優秀な人材も集まりやすくなるでしょう。
また、正社員は長期的な雇用を前提としているため、企業は教育や研修などを通して、計画的な人材育成や従業員のスキルアップを図ることが可能です。
安定した雇用環境は従業員の定着率向上にもつながり、経験やノウハウの蓄積、業務の質・効率性の向上も期待できます。
正社員は企業の中核業務を担う重要な人材として、事業の継続性や安定性の維持、組織の一体感の醸成にも貢献します。
デメリット
正社員は安定した雇用環境が作れるものの、以下のようなデメリットもあります。
- 人件費が高くなる傾向があり、固定費負担が大きくなる
- 簡単に解雇できないため、景気変動などの影響を受けた際の雇用調整が難しい
- 採用や教育にかかる時間とコストが大きい
正社員は他の雇用形態より、給与が高くなります。長期的な雇用を前提とするため、重い固定費負担を覚悟しなければなりません。
正社員への解雇権の行使が企業に認められるケースは限定的で、景気変動などの外部環境の影響を受けた際には、雇用調整が難しくなるでしょう。
また、正社員の採用や教育には、多くの時間とコストが必要です。投資に見合った効果を得るために、企業には適切な人材マネジメントが求められます。
向いている企業
正社員の雇用が向いている企業は、以下のとおりです。
- 長期的かつ安定的な事業運営を目指している
- 専門性の高い業務を行っている
- 従業員の定着率を重視している
長期的な事業展開を計画している企業や、高度な専門知識が必要な業種(医療、金融、IT等)では、事業の継続性と発展を見据えた人材の確保、育成が不可欠です。そのため、正社員を中心とした雇用体制の構築が有効となるでしょう。
また、正社員の雇用は、従業員の定着率を重視する企業にとっても適しています。長期的な雇用により、従業員のモチベーションや帰属意識の向上につながります。
契約社員の特徴
契約社員とは、企業と労働者の間で、一定の期間を定めて雇用契約を結ぶ雇用形態のことです。正社員とは異なり、企業は契約期間が満了した時点で雇い止めすることが可能です。
労使間の合意があれば、契約の延長も行えますが、1回の契約期間は最長で3年(一部専門性の高い職種および満60歳以上の人については、例外として最長で5年)と定められています。
契約が5年を超えて更新される場合には、契約社員に無期転換申込権が発生し、社員から無期雇用への転換を要求される可能性があります。
1回目で3年の契約を、満了時に追加でさらに3年の契約を交わした場合には、再契約のタイミングで無期転換申込権が発生します。
引用:厚生労働省「無期転換ルールについて」
無期転換申込みによって無期雇用契約が成立した場合、実際に無期雇用に切り替わるのは、現時点における契約満了日の翌日です。上図では、更新された3年の契約が満了したタイミングで無期雇用に切り替わります。
なお、無期雇用契約になると、有期雇用契約の労働条件が引き継がれます。無期雇用契約が成立しても、正社員になるわけではなく、「契約期間の定めのない、契約社員と同等の扱いとなる形態」になるといえるでしょう。
メリット
契約社員の雇用形態をとることでのメリットは、以下のとおりです。
- 繁忙期などに合わせて人員調整しやすい
- 正社員と比べて人件費を抑えられる場合がある
- 正社員登用制度を活用し、教育コストを抑えて正社員化できる
契約社員は、契約期間に制限を設けられるため、雇用の調整がしやすいメリットがあります。プロジェクトのフェーズに合わせて契約期間を定めることで、人件費の最適化を図れるでしょう。
また、契約社員の雇用は、正社員と比べて福利厚生やボーナスが少なくなり、人件費を抑えやすくなります。
ただし、契約社員が正社員と同等の業務を行う場合は、「同一労働・同一賃金」の原則に基づいて、企業は正社員と同等の待遇を提供しなければなりません。
優秀な契約社員を正社員登用制度で正社員化することで、教育コストも抑えられるでしょう。
デメリット
契約社員は効果的に活用すると人件費や教育コストを抑えられる雇用形態ですが、以下のデメリットもあります。
- 人員の入れ替わりによる指導・育成の負担が大きい
- 優秀な人材が契約終了とともに流出してしまう
- 正社員と比べて、従業員のモチベーションが低下する可能性がある
契約社員は有期雇用のため、契約期間満了後に再契約しない場合には、新たな人員の確保と指導・育成が必要になります。
企業にとっては長期的な人材育成が難しくなるうえ、優秀な人材が流出してしまう可能性があるでしょう。
また、契約社員は正社員に比べて業務上の裁量が限られる傾向があるため、契約社員は能力を十分に発揮できず、モチベーションの低下につながる可能性があります。
向いている企業
契約社員の雇用形態が適している企業は、以下のとおりです。
- プロジェクト単位で人材を活用したい
- 業績変動に応じて雇用調整を行いたい
- 新規事業の立ち上げなど、期間限定の業務を行う必要がある
契約期間を明確に定められる契約社員の雇用は、プロジェクトの期間に合わせた人材の活用が可能です。
また、業績変動が大きい事業の「繁忙期と閑散期の差が大きい」といった企業では、景気の変動や受注状況に合わせて、契約社員の採用や契約更新を調整することで、人件費を柔軟に管理できます。
パート・アルバイトの特徴
パート・アルバイトは、正社員より労働時間が短い従業員で、一般的にはシフト制で働く雇用形態です。
パート・アルバイトには、法律上の区別はなく、パートタイム労働法によって「1週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者(正社員)の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」と定義されています。
使い分けは企業によって変えられますが、一般的には以下のようなイメージで雇用名称が変えられています。
パート | アルバイト | |
---|---|---|
勤務期間 | 比較的長時間 | 比較的短期間 |
主な対象 | 主婦(夫) | 学生やフリーターを中心とした10~20代の若年層 |
パート・アルバイトは、どちらも軽作業などの補助的な業務を担います。勤務期間や主な対象で使い分けている企業が多いでしょう。
メリット
パート・アルバイトの雇用形態には、企業にとって以下のメリットがあります。
- 人件費を抑えられ、経営の効率化が図れる
- 繁忙期や業務量に応じて、柔軟に人材を活用できる
- 正社員登用の可能性があり、優秀な人材を発掘できる
パート・アルバイトは、正社員と比べて労働時間が短く賃金も時給制であるため、人件費を抑えられ、経営の効率化につながります。特に、人件費の負担に悩む中小企業や、チェーン展開する業態の企業にとって、パート・アルバイトの活用はおすすめの選択肢となります。
また、パート・アルバイトは、繁忙期や業務量に応じて柔軟に人材を活用することが可能です。小売業や飲食業では、週末や祝日などの繁忙期に合わせてパート・アルバイトのシフトを組むと、効率的に人員配置ができるでしょう。
さらに、パート・アルバイトの中から優秀な人材を発掘し、正社員へ登用することもできます。実際の業務を通じて能力や適性を見極められるため、正社員採用の際のミスマッチを減らせます。
デメリット
パート・アルバイトは人件費の削減や柔軟な人材活用が図れる一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 従業員の定着率が低く、教育コストがかかる
- シフト管理や労務管理の負担が大きい
- 企業が求めるシフトと従業員の希望が、合わない場合がある
パート・アルバイトは、正社員と比べて帰属意識も低く、定着率が低い傾向にあります。そのため、採用と教育に対して、継続的にコストと時間を投入しなければなりません。
頻繁に人員が入れ替わることで、業務の継続性や効率性に影響を与える可能性もあるでしょう。
また、パート・アルバイトは、勤務時間や勤務日数が不規則であり、シフト管理が複雑です。労働時間の把握や社会保険の加入など、労務管理の負担も大きくなります。
これらの管理業務を適切に行える状況でない場合、コンプライアンス違反につながる可能性もあり注意が必要です。
さらに、パート・アルバイトでは、従業員の希望するシフトと企業の求めるシフトが合わない場合があります。企業の必要とする時間帯に人材を確保できなければ、業務運営に支障をきたす恐れもあります。
向いている企業
パート・アルバイトの雇用形態は、以下のような企業に向いているでしょう。
- 人件費を抑えたい小売業や飲食業など
- 繁忙期と閑散期の差が大きい
- 単純作業や補助的な業務が多い
- 正社員登用を視野に入れている
パート・アルバイトの活用は、人件費を抑えたい小売業や飲食業などの業種で有効です。人件費の削減により、価格競争力の向上や収益性の改善が期待できます。
また、繁忙期と閑散期の差が大きい企業においても、パート・アルバイトの人員を調整することで、人件費の最適化と経営効率の向上が図れます。
パート・アルバイトでは多くの場合、正社員の補助的な業務を担います。
単純作業や補助的な業務が多い企業では、パート・アルバイトの活用により正社員の業務負担を軽減することが可能です。その分、正社員を専門性の高い業務に集中させられるでしょう。
正社員登用を視野に入れている企業では、パート・アルバイトを一定期間雇用し、その間に能力や適性を見極めることで、正社員としての採用リスクを軽減できます。
派遣社員の特徴
派遣社員は、人材派遣サービスを利用して就業する雇用形態です。
人材派遣とは、派遣会社が雇用する労働者(派遣社員)が、派遣先企業で特定の業務に従事する仕組みのサービスです。派遣先企業は、派遣会社と労働者派遣契約を結び、必要な期間に必要な人数の派遣社員を受け入れます。
派遣社員は、派遣会社と雇用契約を結んでいるため、派遣先企業とは雇用関係がない「間接雇用」になります。
派遣先企業は派遣社員に直接、給与の支払いなどを行う必要がなくなり、給与計算や保険料の計算などの煩雑な業務も削減できるでしょう。
ただし、指揮命令は派遣先企業が行います。派遣先企業には業務指示の他、勤怠管理などの責任もあり、自社の社員と同様の対応が必要です。
なお、人材派遣には大きく分けて3つの種類があり、それぞれ受け入れ期間の上限に違いがあります。
派遣形態 | 受け入れ期間の制限 | |
---|---|---|
有期雇用派遣 | 派遣会社が雇用する派遣社員を、派遣先企業に一定期間派遣する形態 | 上限3年 |
無期雇用派遣 | 派遣会社と派遣社員が無期限の雇用契約を結ぶ形態 | 期間の定めがない |
紹介予定派遣 | 派遣期間終了後に派遣先企業に直接雇用されることを前提とした形態 | 最長6カ月の就業後に双方の合意のもと、直接雇用が可能 |
派遣先企業は、目的に応じて使い分けるとよいでしょう。
メリット
派遣社員の雇用形態には、以下のメリットがあります。
- 採用にかかるコストや時間を大幅に削減できる
- 人材の調達が柔軟に行える
- 正社員が本来のコア業務に集中できる環境を整えられる
- 専門性の高いスキルをもつ人材を、必要な期間のみ活用できる
- 社員の欠員や休業に伴う業務の空白を、迅速に補える
人材派遣では、派遣会社が人材の面接や審査を行うため、派遣先企業は採用コストや採用にかかる時間を大幅に削減できます。繁忙期や新規事業立ち上げの際などに合わせ、迅速に人材を調達できるでしょう。
派遣社員にノンコア業務を任せられれば、正社員は本来のコア業務に注力できるようになり、事業展開をスムーズに進められます。
また、派遣社員の中には、専門性の高いスキルをもった人材も多くいます。人材派遣を活用すれば、最小限の人件費で、プロジェクトの内容に見合ったハイスキル人材を活用することも可能です。
派遣社員は、産休や育休、病気休暇などの際の欠員の補充としても有効です。多くの場合、派遣社員はすでにスキルをもった状態でいるため、最低限の指導で即戦力としての活躍が期待できます。
デメリット
派遣先企業が必要なタイミングのみ活用できる派遣社員には、以下のようなデメリットもあります。
- 派遣期間に制限があり、長期的な活用が難しい
- 派遣社員には契約で定めた業務範囲のみしか求められない
- 派遣先企業が派遣社員の選考を行うことはできない
- 法律で派遣が禁止されている業務がある
有期雇用派遣では、受け入れ期間に3年という制限があります。人材派遣は、あくまで一時的な人員補充が目的であるため、長期にわたってじっくり育成していくことはできません。
また、人材派遣では、派遣先企業と派遣会社の間で締結された契約に基づいて、派遣社員に従事させられる業務の範囲が決まります。業務範囲を超えた派遣社員への指示は法令違反となるため、派遣先企業は十分な注意が必要です。
派遣社員の選考は、派遣会社が行います。派遣先企業が派遣社員を直接選考することはできないため、優秀な人材を受け入れるためには、派遣会社との人材要件のすり合わせが重要です。
なお、人材派遣には法律で派遣が禁止されている業務があります。港湾運送業務、建設業務、警備業務、医療関連業務、士業(弁護士など)などが該当し、これらの領域では原則として人材派遣が利用できません。
向いている企業
派遣社員の活用が適している企業は、以下のとおりです。
- 一時的な業務量の増加が見込まれる
- 専門的なスキルをもつ人材が必要
- 新規事業の立ち上げや業務の立ち上げ期に人材が必要
- 採用コストや教育コストを抑えたい
- 正社員の業務負担を軽減したい
人材派遣は、繁忙期や季節的な需要の変動がある企業、短期プロジェクトを頻繁に行う企業など、一時的な業務量の増加に対応する必要がある場合に適しています。
IT企業やエンジニアリング企業など、高度な専門知識を必要とする業務を行う企業では、必要な期間のみ専門人材を活用することも可能です。
一時的に多くの人材が必要となる新規事業の立ち上げや業務の立ち上げ期にも、人材派遣の活用で、スピーディーに人材を確保できます。採用コストや教育コスト、正社員の業務負担も抑えられるでしょう。
派遣先企業は自社の事業特性や人材ニーズに合わせて、戦略的に検討することが重要です。
業務委託の特徴
業務委託とは、直接雇用関係を結ばずに、外部の個人事業主やフリーランスなどに業務を委託し、その成果に対して報酬を支払う雇用形態です。
業務委託契約と呼ばれるものは、一般的に「請負契約」「委任契約」の2種類に分けられます。そして、委任契約には「委任契約」と「準委任契約」の2つがあります。
業務委託契約の種類 | 契約形態 | 業務・職種例 |
---|---|---|
請負契約 | 成果物の完成を条件に報酬が支払われる契約 | ・デザイナー ・ライター ・プログラマー |
委任契約 | 成果物の有無は問わず、法律行為を扱う業務の遂行が求められる契約 | ・士業 ・医師 ・不動産業 |
準委任契約 | 委任契約のうち、法律行為に該当しない業務を扱う際の契約 | ・コンサルティング ・研究/調査 ・美容関係業務(美容師やエステティシャン) |
請負や委任などの契約としながら、実態として派遣になっている場合には「偽装請負」に該当します。具体的には、委託企業と委託先企業の労働者との間に、指揮命令関係が生じている状態です。
偽装請負は、罰則や懲役刑が科されるため、業務委託には指揮命令系統が生じないことをしっかり把握しておきましょう。
メリット
業務委託のメリットには、以下が挙げられます。
- 専門的な知識やスキルをもつ人材を活用できる
- 雇用関係を結ばないため、人件費や社会保険料等のコストを抑えられる
- 業務の成果に対して報酬を支払うため、コストパフォーマンスが高い
- 自社の人材だけでは対応が難しい業務や、一時的な需要に対応できる
- 外部の専門家の知見を取り入れることで、事業の質の向上が期待できる
業務委託は、成果に対して報酬を支払う契約形態です。専門性の高い業務を外部の専門家に委ねることで、企業は高い費用対効果を期待できます。
自社の人材だけでは難しい業務や、一時的な需要にも対応できるうえ、専門家の知見を取り入れることで、事業の質の向上にもつながります。
雇用関係を結ばないため、コストも抑えられるでしょう。
デメリット
業務委託は専門家の活用により事業の質の向上ができる半面、以下のようなデメリットもあります。
- 自社でのコントロールが難しく、業務の進捗管理や品質管理に注意が必要
- 成果物の品質や納期が、委託先の能力に依存する
- 情報漏洩のリスクがあり、機密情報の取り扱いに注意が必要
業務委託では、委託先に対して、成果物の完成以外の細かい指示を行えません。
細かく業務指示を行なった場合には「偽装請負」に該当します。偽装請負は、労働基準法と職業安定法で記載されている「本来締結すべき労働者派遣契約を締結せずに労働者派遣を行っている状態」にあたり、罰則の対象です。
また、成果物の品質や納期は委託先の能力に大きく依存します。場合によっては業務効率を大きく損ねる可能性があるため、信頼できる委託先の選定が重要です。
機密情報を委託先と共有する必要がある場合には、情報漏洩のリスクもあるため、秘密保持契約の締結や情報管理体制の確認が不可欠になります。
向いている企業
業務委託が向いている企業は、以下のとおりです。
- IT企業やクリエイティブ業界など、専門的な知識やスキルが必要
- 人件費を抑えつつ、高度な専門性が必要な業務を遂行したい
- 外部の専門家の知見を取り入れ、事業の質の向上を目指したい
業務委託は、高度な専門性を必要とする業務を外部の専門家に委ねられるため、IT企業やクリエイティブ業界など、専門的なスキルが求められる企業に適しています。人件費を抑えつつ、事業の質の向上を目指す企業にとっても、適しているでしょう。
雇用形態を変更する際の注意点
企業は雇用形態ごとの違いを理解したうえで、自社の事業特性や人材ニーズに合わせて、適切に雇用形態を選択することが重要です。
また、経営環境の変化や従業員の個人的事情などにより、雇用形態を変更する必要が生じる場合もあります。雇用形態の変更は従業員の労働条件に直接影響を与えるため、適切な手続きと十分な配慮が求められるでしょう。
この章では、雇用形態を変更する際の注意点について詳しく解説します。
労使間の合意と合理的な理由が必要
労働契約法では「労使双方の合意があれば、労働条件の変更が可能である」と規定されています。
しかし、正社員から非正規社員への変更は、多くの場合、従業員にとって不利益な変更となります。簡単に合意を得ることは難しいでしょう。
合意が得られない場合でも、労働条件の変更に十分な合理的理由があれば、変更が認められる可能性があります。変更の合理性は、以下のようなさまざまな要素を総合的に判断して決定されます。
- 変更の必要性
- 他の従業員の処遇
- 同業他社の動向
- 不利益を被る労働者への配慮など
理由のない不利益な変更を行うと、変更後の雇用契約が無効とされるリスクがあるため、注意が必要です。
変更の経緯を記録する
従業員の個人的な事情により、正社員からパートへの雇用契約変更の申し出があった場合には、労使間の合意に至れば雇用契約の変更が容易に認められます。雇用契約を変更する際は、新たにパートタイマーとしての雇用契約を結び直します。
企業は、労働者の同意を得て合理的な理由に基づいて変更を行った場合でも、雇用契約書とは別に、変更に至った経緯を「覚書」という形で文書化しておきましょう。
覚書を残さなければ、後日、従業員から「会社の圧力で仕方なく変更に応じた」などと主張された場合に、企業側に圧力がなかったことを証明するのが難しくなり、変更が無効になる恐れもあります。
覚書は、労使双方が合意した内容を書面にまとめたものであり、従業員が異議を唱えてきた際に、合意があったことを裏付ける重要な証拠となります。
現状の雇用形態で対応できる策がないか検討する
雇用形態を変更する前に、まずは現状の雇用形態で対応できる策がないかを検討することが重要です。
経営不振による人員過剰などを理由に、正社員の一部を非正規社員雇用に切り替えなければならない場合でも、他の対応策を検討し、雇用形態の変更が最善の選択肢であるか慎重に判断しなければなりません。
従業員とよく話し合い、トラブルにならないように変更を進める
やむを得ず従業員の雇用形態を変更しなければならない場合には、従業員とよく話し合い、トラブルにならないように変更を進めていくことが重要です。
雇用形態の変更は従業員の生活に大きな影響を与えるため、十分にコミュニケーションを取りつつ、不安や疑問に真摯に対応することが求められます。また、変更後の労働条件や待遇についても、丁寧に説明し、従業員の理解を得ることが大切です。
従業員の雇用形態変更時に必要な手続きの具体例
従業員の雇用形態を変更するときには、それぞれ必要な手続きが変わります。
この章では、3つのケースの手続き例を紹介します。自社で手続きが必要になった場合に備え、内容を把握しておきましょう。
パートから正社員への変更
パートから正社員へ変更する場合、労働契約を新たな内容で結び直す必要があります。企業は、雇用契約書および労働条件通知書を作り直したほうがよいでしょう。
社会保険や雇用保険に未加入だった場合は、新たに加入手続きが必要です。
正社員からパートへの変更
正社員からパートへ変更する場合にも、労働契約を新たな内容で結び直しましょう。雇用契約書や労働条件通知書も、同じく作り直す必要があります。
パートになった場合に社会保険の被保険者になるかについては、条件によって異なります。
派遣社員の直接雇用への切り替え
派遣社員を直接雇用へ切り替える場合には、派遣会社に連絡して手続きの調整を進めます。
直接雇用に必要な手続きは、以下のとおりです。
- 雇用契約の締結
- 社会保険の加入手続き
- 住民税の特別徴収
- 源泉徴収票の発行
企業は、就業規則の内容に準拠して設定した労働条件を派遣社員に提示し、採用決定後は内定通知書を書面で交付します。
雇用形態による社会保険の加入条件について
社会保険の被保険者になるかどうかは、雇用形態や就業状況によって変わります。
この章では、雇用保険、労働災害保険、厚生年金・健康保険の加入条件を解説します。条件によって、加入できるものとできないものがあるため、確認しておきましょう。
雇用保険
以下の条件に該当する従業員は、本人の希望の有無にかかわらず雇用保険の加入対象です。
- 1週間の労働時間が20時間以上
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる
昼間学生は、原則として加入できません。
企業は、加入対象となった従業員ごとに「雇用保険被保険者資格取得届」を作成し、所轄の公共職業安定所(ハローワーク)に提出します。
労働災害保険
労働災害保険は、雇用形態にかかわらず、全従業員が加入対象です。
従業員ごとの加入手続きはいりません。企業は、所轄の労働基準監督署へ「保険関係成立届」を提出し、その年度に見込まれる保険料を申告・納付します。
厚生年金、健康保険
健康保険や厚生年金保険は、常時雇用されている従業員や、1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が常時雇用者の4分の3以上であるアルバイト・パートなどが、加入対象となります。
また、以下5項目すべてに該当するアルバイト・パートなども加入対象です。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 雇用期間が1年以上見込まれる
- 賃金の月額が8万8,000円以上
- 学生でない
- 常時501人以上の企業に勤めている、もしくは従業員500人以下の事業所で労使合意がある
なお、人材派遣会社ビースタイルスマートキャリアでは、以下を満たした派遣社員は社会保険加入となります。
就業時間 | 加入条件 |
---|---|
20時間以上~30時間未満(週20時間~29時間59分) | ・月額賃金が8万8,000円以上・2カ月を超える契約が見込まれる |
30時間以上(週30時間含む) | 2カ月を超える見込みの契約がある |
派遣社員を活用する場合、社会保険の管理や手続きは派遣会社が行います。上記は、参考程度に把握しておきましょう。
まとめ
現代の企業経営において、多様な雇用形態を効果的に活用することは、事業の柔軟性や効率性を高めるうえで欠かせません。各雇用形態の特性を理解し、自社の事業戦略や人材ニーズに合わせて最適な組み合わせを選択することが、人材マネジメントの重要な鍵となります。
同時に、雇用形態の選択や変更に際しては、労働法規の遵守や、労使間のコミュニケーションが不可欠です。適切な手続きを踏まえ、従業員の理解と協力を得ながら、雇用形態を決定していきましょう。
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